写真は「見れば分かる」ではなく、**“誰が見ても同じように分かる”**が基準です。
本シリーズは、スマホ1台・今日の現場から実践できる内容だけに絞りました。
このシリーズの進め方
- 1分で目的を把握(その写真で何を証明する?)
- 撮り方の型(立ち位置/角度/距離/基準物の入れ方)
- よくあるNGと撮り直し(ブレ・逆光・基準なし など)
- チェックリストで完了確認
大切な考え方
- 再現性:同じ条件で同じ結果が伝わる構図にする
- 時系列:**「前→中→後」**で工程の流れを残す
- 基準:スケール・水平・通り芯・始終点など**“比較できる目印”**を写す
まずは、失敗を恐れず型どおりに撮る。そこから“伝わる一枚”に近づきます。
今回は、舗装工事における「下がり写真」について解説します。
この記事で目指す完成形(最低5枚)
- 全景(遠景)1枚:測点の両端部が入る。撮影方向は始点→終点。
- 左端アップ:断面(路面と基準ライン)と目盛りがくっきり見える。
- 中央アップ:同上。
- 右端アップ:同上。
- 基準ラインが分かる補足1枚:水糸・ピンポール等を含めて基準の取り方が分かる。
※必要に応じて、雨後・夜間など条件別の補助写真を追加。
事前準備(チェックリスト)
- 設計の仕上がり高さ・勾配(片勾配/両勾配)を確認
- 測点の位置と撮影方向(始点→終点)をチームで共有
- 道具:水糸/ピンポール/スタッフ(リボンロッド)/水平器
- 写真の手元(補助)を必要人数確保(目盛り保持・水糸保持・安全確認)
基準の作り方(見せ方が命)
- 計測する左右端部・中央部にマーキング。
- 測点の横断方向に水糸を張る。必要なら水平器で糸のレベル確認。
※道路横断方向の設計勾配を見せたい場合は、基準を「水平(ゼロ)」にして、 糸~路面までの距離で“下がり”を表現すると分かりやすい。 - 各点でスタッフを垂直に当て、水糸から路面までの読みを示す。 数字が読める角度にスタッフを微調整。
撮影ステップ
- 全景(遠景):道路中央付近から、左右端部が入る位置で撮影。
画面内に「水糸」「計測点」「交通規制」の状況が分かるよう構図をとる。 - アップ(左端→中央→右端):
・スタッフの数字が判読できる距離まで寄る。
・ピントをスタッフの目盛りに固定(スマホは長押しでAFロック)。
・2倍程度のズームにして広角の歪みを避ける。
・水糸とスタッフの交点が画面に入っていることを確認。 - 基準の補助写真:水糸の固定方法(人・ピンポール・テープ等)が分かるように1枚。
スマホ/カメラの設定のコツ
- グリッド表示ON:水平を取りやすい。
- 露出補正:白いスタッフが飛ばないよう、少し暗めに。
- 手ブレ対策:脇を締め、連写で保険を取る。可能ならミニ三脚。
- 夜間:LEDライトは斜め上から当てて反射グレアを回避。
- 雨天:水糸・スタッフの水滴を拭き、数字がにじまないように。
ファイル名と並べ方(後で探しやすく)
- ファイル名例:2025-08-22_J1+20_下がり_全景.jpg / 2025-08-22_J1+20_下がり_L-UP12mm.jpg …
- 掲載順:全景 → 左端UP → 中央UP → 右端UP → 基準補助
よくあるNGと回避策
- 目盛りが読めない:寄り不足。2倍ズーム+AFロック、露出を下げる。
- 視差(読み違い):カメラをスタッフへ正対。斜めから撮らない。
- スタッフが傾いている:必ず垂直。水糸はたるませない。
- 遠景がない:位置関係が伝わらない。必ず全景1枚を追加。
- 撮影方向が逆:原則は始点→終点。撮り直し。
現場で使えるポケットチェックリスト(コピペOK)
□ 設計の勾配・切削量を確認(片/両勾配) □ 測点・撮影方向(始点→終点)を共有 □ 水糸・スタッフ・補助員を準備 □ 全景1枚 → 左端UP → 中央UP → 右端UP → 基準補助 □ 数字が読めるまで寄る/AFロック/2倍ズーム □ 水糸はピン張り、スタッフは垂直 □ その場で拡大確認→不鮮明は即撮り直し
小ワザ:設計値との比較を1枚で伝える
アップ写真の端に小さなメモ(チョークやカード)で 「設計下がり:L=10mm / C=18mm / R=10mm」などを写し込むと、 写真だけ見ても合否が分かり、説明がスムーズになります。
まとめ
「下がり」の写真は、基準を明確に見せることがすべて。
水糸(水平)とスタッフ(垂直)をきちんと見せ、全景+3点アップ+補助の 最小5枚を確実に揃えましょう。
撮ったその場で拡大確認し、ダメなら即リテイク。 このルーチンが、品質証拠と工程の強い味方になります。
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