出来形管理の基本と実践

現場監督虎の巻

1. 出来形管理とは?

出来形管理とは、施工された構造物や部材の寸法、形状、品質が設計図書に定められた基準を満たしているかを確認し、その結果を記録・管理する一連の活動です。

建設工事においては、設計図書の要求事項を満たす構造物を完成させることが求められ、出来形管理は品質管理の重要な要素として位置づけられます。



適切に出来形管理を行うことで、以下のメリットが得られます。

設計図書に定められた精度を確保し、構造物の安全性や機能性を向上させます

品質不良や手戻りを早期に発見し、再施工や修正を最小限に抑えることができます

発注者や監督職員との間で工事の進捗状況や品質について共通認識を持つことができ、信頼関係の構築に繋がります。

工事の記録として、完成後の維持管理や将来の改修工事、紛争解決のための重要な証拠となります。

2. 出来形管理の基本的な進め方

(1) 測定項目の確認

まず、どの工種、どの部材、どの工程について出来形を管理するのかを、設計図書(図面、仕様書、数量総括表など)に基づいて明確に把握します。

工種ごとに管理すべき寸法や測定基準、規格値が「土木工事施工管理基準及び規格値(案)」などに定められているため、これらを確認することが重要です。

主な測定項目には以下のようなものがあります

・コンクリート構造物の高さ・幅・厚さ

・道路や舗装の仕上がり高さ、幅、平坦性

・鉄骨・鉄筋の配置寸法(径、ピッチ、かぶり厚さ、定着長など)

・基礎の掘削深さ・勾配、杭の根入れ長


(2) 測定方法の選定

測定にはいくつかの方法があり、工事の種類、測定箇所、精度の要求、現場の状況などを考慮して適切な手法を選びます設計図書に測定方法が指定されている場合もあります

巻尺・スケール測定:比較的簡単な寸法測定に使用

レベル測定:高さ管理に適用

トータルステーション:高精度な位置・距離・三次元データによる出来形管理が可能

ノギス・マイクロメーター:ミリ単位以下の精密測定に使用

非破壊試験(鉄筋探査、強度推定など)

三次元計測技術を用いた出来形管理


(3) 測定結果の記録

出来形測定結果は、設計図書や「土木工事施工管理基準及び規格値(案)」に示された規定のフォーマット、または工事写真の場合は写真管理基準に沿って記録し、出来形管理図表や報告書を作成します

測定結果が規格値を満たしているかどうかを個々の測定値だけでなく、平均値や標準偏差なども考慮して確認し、もし規格値外の数値が出た場合は、原因を究明し、適切な修正方法を検討します


記録の際には、

・測定日

・測定場所(測点、施工範囲)

・測定値(設計値との比較、規格値の明記)

・測定方法

・使用した測定機器(校正記録の保管も重要)

・立会者(管理技術者・発注者(監督職員))

小黒板の情報(工事名、工種、測点、設計寸法、実測寸法など)

などを明確に記載し、写真による記録も重要です。


(4) 是正措置の検討

もし測定値が許容範囲を超えている場合(規格値を満たさない場合)は、どのように修正するかを検討し、監督職員と協議します

軽微な誤差の場合 → 補修・調整で対応可能か確認

大きな誤差の場合 → 施工方法の見直し、再施工の要否を判断

設計図書の変更が必要な場合 → 発注者・設計者と協議し、設計変更の手続きを行います

出来形管理は、単なる数値の確認ではなく、施工品質の確保と問題発生時の迅速な対応を目的としています。是正措置の内容や結果も記録として残すことが重要です。

3. 出来形管理の実践ポイント

(1) 事前準備を徹底する

出来形管理をスムーズに進めるためには、設計図書、施工計画書、出来形管理基準などを熟読し、測定のタイミングや測定方法、使用する測定機器などを事前に具体的に決めておくことが重要です

施工計画の段階で、どの工程でどのような測定が必要かを整理し、関係者と共有しておきましょう。

段階確認の時期と項目についても、監督職員との打合せで確認しておきましょう。


(2) 適切な測定タイミングを見極める

出来形測定は、工事が進んでしまうと後戻りできないため、適切なタイミングで行うことが求められます段階確認の時期に合わせて測定を行うことも重要です。

・コンクリート打設前後の寸法測定(型枠寸法、鉄筋配置、打設後の高さなど)

・鉄筋組立後のピッチ・かぶり厚さ確認

・舗装前の路盤高さチェック

埋戻し前の構造物の寸法確認

など、作業の節目でしっかり測定し、次の工程に影響を与えないようにしましょう。不可視となる部分については、特に注意して測定・記録することが求められます。


(3) 測定ミスを防ぐ

測定は正確に行う必要があり、誤った測定は施工不良につながる可能性があります。

・測定機器の定期点検(校正を含む)を行う

・複数人でのダブルチェックを実施する

・記録ミスを防ぐために写真や動画を活用する

測定結果は、その都度管理図表等に記録する

といった対策を講じることで、より精度の高い出来形管理が可能になります。


4. まとめ

出来形管理は、施工品質を確保するための重要な工程です

若手現場監督にとっては、最初は難しく感じるかもしれませんが、基本的な流れを理解し、設計図書や関連基準を遵守し、測定・記録の精度を高めることで、確実にスキルアップできます

出来形管理をしっかり行うことで、品質の良い施工を実現し、発注者や上司からの信頼も得られます。

日々の業務の中で経験を積みながら、正確な測定と記録を意識して取り組んでいきましょう。


(追記)
出来形管理においては、情報化施工三次元計測技術を活用するケースも増えています。
これらの技術を活用することで、より効率的かつ高精度な出来形管理が可能になります。
ご査収ください。


現場の状況によっては臨機応変な対応が必要ですが、基本の考え方は変わりません。

今後も若手現場監督の皆さんに役立つ情報を発信していくので、ぜひ参考にしてください!

コメント

タイトルとURLをコピーしました