1. 工程管理の重要性
工程管理とは、工事を計画通りに進めるためのスケジュール管理のことです。適切な工程管理を行うことで、以下のようなメリットがあります。
- 工期の遵守:決められた納期までに工事を完了させる。
- コスト管理の最適化:無駄な作業や人員の過不足を防ぐ。
- 品質の確保:適切な作業順序とスケジュールで施工品質を維持。
- 安全管理の向上:計画的な作業により、無理な工程による事故を防止。
2. 工程表の作り方
工程表は、現場の進捗管理の要です。適切な工程表を作成することで、スムーズな施工を実現できます。
(1) 工程表の種類
- バーチャート(ガントチャート):
- 横軸に時間、縦軸に作業を並べ、作業の流れが一目で分かる。
- シンプルで分かりやすく、小規模な工事に向いている。
- ネットワーク工程表(クリティカルパス法):
- 作業間の依存関係を考慮し、全体の流れを最適化。
- 重要な工程(クリティカルパス)を把握することで、遅延リスクを最小化。
- 大規模かつ複雑な工事に適している。
(2) 工程表作成のステップ
- 工事全体の流れを把握する
- 設計図書や契約書の工期を確認。
- 作業内容や各工程の相互関係を整理。
設計図書や契約書に基づき、工事の全体像を把握します。
- 主要な作業をリストアップする
- 掘削工事、基礎工事、躯体工事、仕上げ工事など。
- それぞれの作業に必要な期間を見積もる。
掘削、基礎、躯体、仕上げといった主要な工程に加え、各工程内の詳細な作業も洗い出します。
- 作業の順序と関係性を整理する
- どの作業が先行するか、並行して進められる作業はあるかを考慮。
- クリティカルパス(全体の工期に影響を与える作業)を明確にする。
先行作業、後続作業、並行作業を明確にし、作業間の依存関係を図示します。
- 適切な工期を設定する
- 実際の作業時間+予備日を含めた現実的なスケジュール。
- 天候や資材納入の遅れなど、リスクを考慮。
過去の類似工事のデータや、作業に必要な人員、機械などを考慮して、各作業の所要日数を算定します。見積もった作業期間に、天候による影響や資材調達のリードタイム、検査期間などを考慮した予備日を加えます。
- 工程表を作成する
- ソフトウェア(Excel、Project、CAD)を使用して作成。
- 現場で管理しやすいように、分かりやすいフォーマットにする。
バーチャート形式やネットワーク形式で工程表を作成します。近年では、BIM/CIMモデルを活用した工程管理も注目されており、3次元モデルと連携させることで、より視覚的で精度の高い工程管理が可能になる可能性があります。
3. 工程の遅れが出たときの対処法
工程管理では、計画通りに進まないことが必ず発生します。遅れが出た際には、以下の手順で対応しましょう。
(1) 遅れの原因を特定する
- 気象条件:雨天や台風などの影響。
- 資材調達の遅れ:メーカーの都合や輸送トラブル。
- 人員不足:職人の手配ミスや急な欠勤。
- 施工トラブル:品質不良による手戻りや、現場条件の変更。
- 設計変更や関係機関との調整の遅延なども原因として考えられます。
(2) リカバリー方法を検討する
- 作業時間の延長
- 残業・休日出勤を調整し、工期を取り戻す。
- ただし、安全面やコスト増に注意。
- 作業の並行進行
- 他の工程と同時並行で作業を進められるかを検討。
- 例:内装工事と外装工事を同時に進める。
- 作業人員の増員
- 追加の作業員を確保し、作業速度を上げる。
- ただし、急な増員は指揮系統の混乱を招くため注意。
- 工程の見直し
- 非クリティカルな工程の短縮や調整。
- 例:仕上げ工程の一部を別業者に依頼。
- クリティカルパスの見直し: 遅延がクリティカルパス上の作業で発生した場合、全体の工期に影響するため、特に慎重な対応が必要です。非クリティカルパス上の作業で遅延が発生した場合は、クリティカルパスに影響を与えない範囲で調整を行います。
- 工法の変更や資材の代替:より効率的な手法を検討。
・補足として:
発注者の仕様によっては、設計意図の伝達や設計・現場条件の確認を目的とした三者施工協議会の開催が定められています。工程の遅延が設計や現場条件に起因する場合は、協議会で早期に情報共有し、対策を検討することが重要です。
(3) 関係者と共有し、調整する
- 遅延が発生したら、速やかに上司や発注者と共有。
併せて、下請業者や関係する他の工事業者とも速やかに情報共有し、協力体制を構築する。 - 代替案を提示し、合意を得た上で進める。
- 変更後の工程を現場全員と共有し、統一した理解を持つ。
- リカバリー策を実施した結果、工程に変更が生じた場合は、速やかに変更工程表を作成し、監督職員に提出し承認を得る必要がある。
(4) 記録と分析
・遅延の原因と対応策を記録し、今後の工程管理に活かす。
・似たトラブルを防ぐため、過去の事例を参考にする。
4. まとめ
工程表は、工事を成功させるための重要なツールであり、事前の計画と、遅延発生時の迅速かつ適切な対応が不可欠です。施工計画書の作成段階から、詳細な作業内容、順序、期間を検討し、余裕を持たせた計画を立てることが重要です。
また、BIM/CIMなどの新しい技術を活用することで、より高度な工程管理が期待できます。遅延が発生した場合は、関係者との密な連携を図りながら、最適なリカバリー策を実行していくことが、現場監督の重要な役割となります。
適切な工程管理を身につけることで、現場の信頼を得ることができ、現場監督としてのスキルも向上します。ぜひ実践してみてください!
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