アスファルト舗装の伸縮・膨張対策について

現場監督虎の巻


現場監督のみなさま、お疲れさまです。

アスファルト舗装は温度変化や荷重によって伸縮やひび割れが生じやすく、特に夏の猛暑や冬の凍結期にはトラブルが発生しやすくなります

適切な施工管理と素材選定を行わないと、舗装寿命が短くなりメンテナンスコストが膨らむ原因にもなります

今回は、アスファルト舗装における伸縮・膨張トラブルのメカニズムと、現場で実践できる対策ポイントを詳しく解説します。


アスファルト舗装の伸縮・膨張メカニズム

  • 熱膨張・収縮
    アスファルト混合物は温度上昇で柔らかくなり膨張し、気温低下で硬化して収縮します。夏季の直射日光下では舗装表面温度が60℃以上になることもあり、膨張応力が生じてひび割れやブロック化の原因になります。

  • 基盤(路盤)の影響
    路盤の沈下や凍結・融解サイクルによって地盤が不均一に動くと、アスファルト層にも応力が伝わります。不十分な路盤締固めや不均一な下地があると、部分的にたわみや沈下が発生し、表面に亀裂が生じます

  • 荷重負荷による疲労
    車両や重機の通行が繰り返されると、アスファルト内部に疲労亀裂が蓄積します。特にトラックなどの重車両が頻繁に通行する現場では、疲労クラックと熱膨張の組み合わせでひび割れが拡大しやすくなります。


事前に押さえておきたい現場準備

路盤(下地)の締固めと平坦性確認

  • 適切な転圧工程
    路盤は設計された地盤高と材料組成に基づき、最適な締固めを実施します。一般的には転圧回数や重機搭載荷重をプロジェクト仕様書に従って厳守し、均一な締まり具合を確保します。

  • 平坦性の確保
    下地の凹凸があるとアスファルトが薄い部分で早期に損傷が発生します。レーザーレベラーや3Dレベリングを活用し、下地の平坦性を5mm以下に抑えることを目指しましょう。


必要な排水対策

  • 排水勾配の設計
    アスファルト舗装では水分が長時間滞留すると、凍結時に内部で膨張し舗装表面にひび割れを誘発します。設計段階で1~2%程度の適切な排水勾配を確保し、路面から雨水を迅速に排除することが重要です。

  • 側溝・排水桝の配置
    舗装全体で雨水が流れる方向を把握し、低い位置に側溝や排水桝を配置します。雨水が溜まりやすい箇所には追加の排水設備を設置し、凍結融解によるダメージを防ぎましょう。


アスファルト混合物の材料選定と温度管理

混合設計(アスファルト混合物の選定)

  • 適切なバインダー(アスファルトセメント)グレード
    バインダーの粘度や柔軟性は、使用環境の温度範囲に合わせて選定します。高温でも流動しにくく、低温でも割れにくい性能を持つ改良アスファルト(SBS改質アスファルトなど)を採用すると、伸縮対策効果が向上します。

  • 骨材粒度組成(Gradation)の適正化
    骨材の粒度分布を適切に調整することで、密度の高い締固めが可能になります。粗骨材比率が高すぎると締固め時に空隙が残りやすく、下地の水分侵入や凍結融解に弱くなるため、プロジェクト仕様書に基づいたGradation設計を厳守しましょう。


打設温度と転圧タイミング

  • 打設温度の管理
    アスファルト混合物の最適打設温度は一般的に140~160℃ですが、気温が極端に高い日中や極端に低い早朝は性状が変化します。ミキサプラントで出荷時の温度を確認し、現場到着時の温度が規定範囲(120~140℃)を下回らないよう注意します。

  • 転圧開始のタイミング
    打設直後に適切な転圧を開始し、混合物が冷え固まる前に圧縮状態を固定します。転圧を早く開始しすぎると表層の混合材が浮き上がる恐れがあるため、打設後30分以内を目安に転圧を完了させるよう心がけましょう。


伸縮目地(シームジョイント)の設置

  • 目地設置間隔の目安
    広い車道や駐車場では、舗装幅が6~10mを超える場合に5~8m間隔で伸縮目地を設置します。使用頻度の高い路線や温度変化の大きい地域では、目地間隔を短くすることで伸縮トラブルを抑制できます。

  • 目地材料の選定
    伸縮目地には耐候性・耐油性に優れたポリウレタン系シーリング材や特殊エラストマー系シーリング材を使用します。目地底部にはバックアップ材(フォーム/PE/PU製)を填入し、シーリング材の厚みと変形量を確保します。

  • 施工時の注意点
    目地幅は通常5~8mm程度を確保し、シーリング材が適切に充填されているか確認します。施工後はシーリング材の表面に養生テープを貼り、硬化時にほこりや異物が付着しないよう保護しましょう。


補修・保守管理のポイント

定期的な走行性・目視点検

  • 巡回点検の実施
    定期的に現場を巡回し、ひび割れ(クラック)、たわみ、ポットホール、目地の剥離などの初期トラブルを早期発見します。特に交差点やカーブ、斜度のある箇所は伸縮トラブルが発生しやすいため重点的にチェックしましょう。

  • データ記録と劣化傾向把握
    点検結果や補修履歴を記録し、場所・規模・補修方法などをデータベース化します。時系列で劣化傾向を把握することで、「いつ、どこで、どのように手を打つべきか」が明確になり、効率的な保守管理が可能になります。


早期補修の重要性

  • ミクロクラックへのシーリング注入
    まだ幅が1mm以下の微細なクラック(ヘアクラック)には、早期にシーリング材を注入し水の侵入を防ぎます。早期対応により、凍結融解サイクルや車両荷重によるクラック拡大を防ぐことができます。

  • 切削オーバーレイ工法の活用
    幅広いひび割れや走行疲労が進行している場合、既設アスファルト層を部分的に切削し、新しい混合物でオーバーレイ(上張り)することで舗装表面を一新します。この手法は、路盤を保護しながら短期間で修復できるため、交通規制時間を極力短くするメリットがあります。


事例紹介:伸縮トラブルと対応策


とある公園駐車場では、夏季に表面温度が上昇した際、舗装の中央部で幅2mm程度のひび割れが発生しました。調査の結果、以下の要因が判明しました。

  1. 路盤の締固め不足により、舗装の中央部がわずかに沈下していた。
  2. 打設温度管理が不十分で、表層が冷え固まる前に転圧が終了していた。
  3. 伸縮目地が近隣建物の影響で設置間隔が異常に広くなっていた。

改善策として、以下の対応を実施しました。

  1. 路盤を再度締固め直し、均一な地盤強度を確保
  2. 打設時の混合物温度をプラント出荷時に140~150℃に設定し、現場到着時に130℃以上を維持
  3. 伸縮目地を5m間隔で再配置し、幅を7mmに統一。耐候性シリコーン系シーリング材を丁寧に充填。
  4. 翌シーズンに巡回点検を強化し、ひび割れが発生した場合は即時シーリング注入で初期補修を実施

これらの対策により、その後2年間は目立ったひび割れやポットホールが発生せず、舗装寿命が大幅に延伸しました。


まとめ


アスファルト舗装の伸縮・膨張トラブルを防ぐには、路盤の締固め、排水対策、適切な混合設計、打設温度管理、伸縮目地の設置、そして定期的な点検と早期補修が不可欠です。

現場監督として、施工前段階から完成後の保守管理まで一貫して品質を確保することで、長寿命かつ安全な舗装を実現しましょう


この記事が役立ったら、ぜひ「現場監督虎の巻」カテゴリもご覧ください!


コメント

タイトルとURLをコピーしました