現場監督のみなさま、お疲れさまです。
建設業を取り巻く法規制は年々変化し、特に2025年にかけては「働き方改革関連法のさらなる強化」「社会保険・労災範囲の拡大」「建設業法の改正」など、多くの改正項目が予定されています。
現場の安全・品質・コスト管理に直結する部分も多いので、最新情報をしっかりキャッチアップしておきましょう。
時間外労働上限規制のさらなる厳格化
2024年4月から建設業にも適用されている時間外労働の上限規制ですが、2025年4月以降は、以下のようにさらなる厳格化が予定されています。
- 年間720時間程度の上限を厳守
月平均60時間以内(繁忙期は最大1ヵ月100時間)が原則。違反した場合は行政指導や罰則が強化されます。 - 36協定届の提出要件の見直し
長時間労働を伴う36協定を結ぶ際、労使で合意した「具体的な業務量や休息時間の確保方法」を明示したうえで、労働基準監督署に提出することが義務化されます。 - 年次有給休暇の確実な取得
年5日の有給取得義務化はすでに施行済みですが、企業として取得計画を策定し、実績を報告する義務が強化されます。現場としても、チーム単位で休暇を調整し、繁忙期でも一定数の出勤者を確保する仕組みづくりが必要です。
建設業法施行令・施行規則の改正
2025年2月に施行される見込みの建設業法改正では、次のようなポイントが含まれています。
- 技術者配置金額の引き上げ
工事金額に応じて配置が義務付けられる主任技術者・監理技術者の金額要件が引き上げられます。具体例として、従来は500万円以上の工事で主任技術者配置が必要でしたが、2025年以降は600万円以上など、区分が細分化される予定です。 - 継続的な安全衛生教育の義務化
建設現場で働くすべての労働者に対して、定期的に安全衛生教育を実施し、その記録を3年間保存することが義務付けられます。現場監督は、講習資料や受講者名簿をしっかり管理しましょう。 - 電子契約・電子署名の活用促進
紙ベースでの契約書や施工体制台帳の管理に加え、ITツールを活用した電子契約が正式に認められ、押印義務が緩和されます。ペーパーレス化による書類保管コスト削減だけでなく、リモート現場打合せの効率化にもつながります。
社会保険・労災保険の適用拡大
2025年からは、短時間労働者や一人親方などにも社会保険・労災保険の適用範囲が拡大されます。
- 短時間労働者の社会保険加入要件緩和
週20時間以上労働し、月額賃金が8.8万円以上、勤務期間が2ヵ月以上見込まれる場合は健康保険・厚生年金に加入が義務化されます。これにより、アルバイトやパートで入場している職人も該当する可能性があります。 - 一人親方の労災保険特別加入の拡大
建設業の一人親方が労災保険に特別加入できる業務範囲が拡大され、「清掃」「解体」「搬入搬出」「仮設設備の設置」などが新たに加えられます。加入手続きには労働局への申請が必要となるため、現場監督としては、一人親方の加入状況を確認し、未加入の場合は加入を促しましょう。 - 育児介護休業法の改正
建設業でも男性労働者の育児休業取得促進が進められ、休業期間中の給付金や制度利用のハードルが引き下げられます。現場のシフト調整や代替要員手配に備え、育休取得者が出た場合の体制整備を早めに行う必要があります。
安全衛生関連法令の強化
安全管理とメンタルヘルスの両面から、以下のような改正が行われています。
- 熱中症対策ガイドラインの見直し
国土交通省や厚生労働省が共同で発行する現場向け熱中症対策ガイドラインが更新され、休憩時間や水分補給の目安がより詳細に示されます。現場監督は、休憩所の確保や適切なタイミングでの休憩呼びかけを徹底しましょう。 - メンタルヘルス対策の義務化
ストレスチェック制度の対象範囲が拡大され、建設現場の作業員にも「年1回以上の実施」が義務付けられます。職場環境や労働時間に関するアンケートを実施し、結果に応じた職場改善を行うことが求められます。 - 高所作業・足場の安全基準見直し
足場の組み立てやクレーン作業に関する許可要件が厳格化され、資格保有者の経験年数要件や定期講習の受講義務が強化されます。職長・安全衛生責任者の資格更新を忘れずに行いましょう。
環境関連法規の強化
脱炭素社会に向けた取り組みとして、建設現場にも以下の環境関連法改正が影響します。
- 建設リサイクル法の適用範囲拡大
コンクリート廃材やアスファルト廃材の再資源化・リサイクル率向上目的で、分別解体や廃材搬出報告の義務が厳格化されます。現場監督は、廃材の分別基準や保管方法を徹底し、施工ごとにリサイクル率を把握する必要があります。 - 省エネルギー法に基づく見える化義務
現場事務所やプレハブ事務所で使用する電気・ガソリン・ガスなどのエネルギー消費量を計測し、その結果を省エネルギー目標と比較して公表する義務が拡大されます。省エネ設備の導入計画や使用実績を記録し、定期的に報告書を作成しましょう。 - 大気汚染防止法の強化
建設機械から排出されるPM2.5などの大気汚染物質規制が強化され、現場で使用する重機の排ガス性能基準が厳しくなります。新規導入機械は最新の排ガス規制適合機を選定し、定期的な排ガス測定データを記録する必要があります。
まとめ
2025年にかけて、時間外労働の上限規制厳格化や建設業法の改正、社会保険・労災の適用拡大、安全衛生関連法令の強化、そして環境関連法の見直しなど、多岐にわたる法改正が予定されています。
これらは現場の働き方やコスト、安全管理、品質管理に大きく影響を与えます。
現場監督としては、改正項目ごとに自社・自現場の対応状況を把握し、早めに社内周知・関係者への説明を行いましょう。
最新ルールを正しく理解し、適切に対応することで、無理な残業やトラブル・罰則を回避し、安全かつ効率的な現場運営を実現できます。
今後も法改正情報は逐次アップデートし、情報アンテナを高く張り続けましょう。
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