1. クレーム対応の重要性
現場監督として工事をスムーズに進めるためには、近隣住民や施主からのクレーム対応が欠かせません。クレームを適切に処理しないと、工事の進行に支障をきたすだけでなく、会社の信用問題にも発展しかねません。特に若手監督は、クレームが発生した際にどう対応すべきか戸惑うことが多いため、基本的な流れを理解しておくことが重要です。
官公庁工事や民間工事を問わず、適切な対応が求められるとともに、記録の重要性が高まります。
2. クレームの主な原因
施工中に発生するクレームには、以下のようなものがあります。
(1) 近隣住民からのクレーム
騒音・振動:掘削工事や重機作業による影響
粉じん・悪臭:コンクリートやアスファルト工事による粉じん、塗装や防水工事で発生する臭い
交通の妨げ:資材搬入や工事車両による道路の占有
安全面の不安:工事現場周辺の危険性(飛散物、照明不足など)
(2) 施主からのクレーム
説明不足:施工内容や進捗状況が十分に伝わっていない
工事の遅延:工程の遅れや施工ミスによる引き渡しの遅れ
仕上がりの不満:施工品質が施主の期待と異なる
設計図書との差異や、施工方法の変更に関する事前の合意不足も、施主からのクレームに繋がる可能性があります。
3. クレーム対応の基本
クレームを受けた際は、冷静に対応し、適切な手順で処理することが重要です。以下のステップで対応しましょう。
(1) まずは冷静に話を聞く
- 感情的にならず、相手の話をしっかり聞く。
- メモを取りながら、事実関係を整理する。
- 「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と一言お詫びを伝える。
相手の感情に配慮し、丁寧に話を聞くことは基本中の基本です。「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」というお詫びは重要です。
(2) クレームの内容を整理する
- 誰が、何について、どのような不満を持っているのかを明確にする。
- 現場で解決可能な問題か、上司や会社に報告すべき問題かを判断する。
事実関係の整理に加え、設計図書や関連法規、契約内容に照らし合わせて、クレームの内容が正当なものか、対応の範囲はどうなるのかを確認することが重要です。
(3) その場で即答せず、対応方針を確認する
- 「すぐに確認いたします」と伝え、一旦持ち帰る。
- 上司や関係者と相談し、適切な対応方針を決める。
- 会社の規定や契約内容を確認し、対応の可否を判断する。
上司や関係者への相談に加え、監督職員への報告・協議が必要となる場合もあります。例えば、掘削中に埋設物を発見した場合や、地盤の状態が設計図書と著しく異なる場合などです。
(4) 解決策を提示し、納得を得る
- 施主や近隣住民へ、具体的な対応策を説明する。
- 相手が納得するまで、丁寧に説明を行う。
- 必要に応じて、改善策を実施し、再発防止策を講じる。
具体的な対応策の説明に加えて、必要に応じて、工事の進捗状況や今後の予定を丁寧に説明し、相手の不安を解消することも重要です。
(5) クレームの記録を残す
- クレームの内容、対応内容、対応後の結果を記録する。
- 上司や会社へ報告し、今後の対応に活かす。
クレームの内容、対応内容、結果の記録は、今後の対策や類似のクレーム発生時の対応に役立ちます。多くの発注者の施工管理基準では、測定や試験の結果を記録し、監督職員の請求に応じて速やかに提示することや、工事完成時に提出することが求められています。クレームの内容や対応についても、これらの記録と同様に重要となります。
4. ケース別対応例
【ケース1】 近隣住民からの「騒音がうるさい!」
対応手順:
- まずは「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と謝罪。
- どの時間帯に騒音が気になるのかヒアリング。
- 施工方法の変更や作業時間の調整が可能か検討。
- 会社に報告し、対策を決定。
- 対策内容を住民へ説明し、理解を得る。
- 作業後、影響が軽減されたか確認。
•騒音のヒアリングに加えて、工事前に周辺住民への工事概要、期間、騒音対策などを周知しておくことが重要です。「工事のお知らせ」などを配布し、連絡先を明記しておくことも有効です。
•低騒音型の建設機械の採用も、騒音対策として考慮すべき事項です。
•対策後、影響が軽減されたかの確認と合わせて、工事への理解と協力を求めることも大切です。
【ケース2】 施主からの「工事が遅れている!」
対応手順:
- 「ご心配をおかけして申し訳ありません」と謝罪。
- 遅延の原因を説明(天候、資材調達、施工トラブルなど)。
- 現状の進捗と今後のリカバリープランを提示。
- 必要ならば工事体制の強化や工程変更を提案。
- 進捗をこまめに報告し、不安を解消。
•遅延の原因説明に加え、設計変更や予期せぬ事態が発生した場合は、速やかに施主に報告し、協議を行う必要があります。
•リカバリープランの提示だけでなく、必要に応じて、遅延による影響(例えば、引き渡し時期の変更など)についても誠実に説明し、理解を求めることが重要です。
5. まとめ
クレーム対応は、現場監督の重要な仕事の一つです。誠意ある対応と迅速な問題解決で、近隣住民や施主との信頼関係を築くことができます。若手のうちは、一人で判断せずに、上司や監督職員に相談し、適切な指示を仰ぐことが大切です。
また、日頃から近隣住民や施主とのコミュニケーションを密にし、良好な関係を築いておくことが、クレームの発生を未然に防ぐ上で非常に重要です。
特に重要なポイント
•監督職員との連携: 問題発生時は、速やかに監督職員に報告・相談し、指示を仰ぐこと。
•記録の徹底: クレームの内容、対応、結果を詳細に記録し、報告すること。
•事前説明の重要性: 工事開始前に、周辺住民や施主に対して工事内容や影響について丁寧に説明し、理解と協力を得ること。
•関連法規・設計図書の確認: クレームの内容が適切かどうか、対応範囲はどうなるのかを、関連法規や設計図書に基づいて判断すること。
適切な対応を積み重ねることで、現場監督としての信頼を得ることができます。どんなクレームにも、誠意をもって対応していきましょう!
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