はじめに
建設工事において避けて通れない課題の一つが、建設発生土(残土)や建設副産物(産業廃棄物)の適正な処理です。単にコストの問題にとどまらず、環境負荷の低減、そして法令遵守の観点からも極めて重要なテーマです。
本記事では、公共工事の仕様書やマニュアル等をもとに、残土・産廃処理の法令と最適化ポイントを解説します。
1. 法令遵守の基本:建設リサイクル法と建設発生土処理
建設工事から発生する特定建設資材廃棄物(コンクリート塊やアスファルト・コンクリート塊、建設発生木材など)は、「建設リサイクル法」に基づく対応が必須です。
対象工事(一定規模以上の解体工事や新築工事等)では、以下の手順を踏む必要があります。
- 事前調査の実施:対象建築物や周辺環境、付着物の有無、構造などを調査し、分別解体の要件を確認します。
- 分別解体計画の作成:調査結果に基づき、工事内容、工程順序、分別方法、見込み量などを計画書に記載します。
- 発注者への説明・契約:分別解体計画を文書で交付し、再資源化施設や費用を契約書に反映させます。
- 事前届出:工事着手の7日前までに、都道府県知事等へ分別解体計画を届け出ます。
- 下請負人への告知・契約:元請負人は下請負人へ計画内容を周知し、同様に書面で契約します。
- 施工計画の作成:再生資源利用計画、廃棄物処理計画などを施工計画書に盛り込みます。
- 再資源化・完了報告:分別後の廃棄物を再資源化し、完了報告書を発注者に提出、記録を保存します。
建設発生土については、土壌汚染対策法や盛土規制法などの要件も確認し、再資源化促進計画に添付し掲示する必要があります。
2. 施工計画と具体的な処理・運搬管理
施工計画書には、再資源化の促進や副産物の適正処理方法を具体的に明記します。
これは法令遵守だけでなく、工事の円滑な進行とコスト管理にも寄与します。
- 工事着手前の措置:分別解体計画に沿って作業場所や搬出経路を確保し、付着物の除去を実施。
- 分別と再利用・再生利用:発生した資材を種類ごとに分別し、可能な限り再資源化します。
- 運搬管理:運搬委託先には再資源化促進計画を共有し、受領書を確実に取得。飛散防止措置を徹底します。
- 特殊工種の対応:シールド工事やオープンケーソンの残土処理では、専用の計画書を作成し監督職員へ提出。
- 材料管理:湿気や変質を防ぐため、セメントや混和剤の品質を試験し、不適格品は使用前に排除します。(品質のバラつき防止→無駄な廃棄を減らす)
3. 監督職員との密な連携
設計図書や仕様書に基づく施工が基本ですが、計画変更や異常発生時には速やかに監督職員と協議し、必要な手続きを行います。
以下の書類は特に求められることが多いです。
- 再生資源利用計画・促進計画書
- 建設発生土搬出先受領書の写し
- シールド発生土処理計画書や品質確認資料
- 完了報告書面(建設リサイクル法に基づく再資源化報告)
4. 最適化の追加ポイント
- 計画段階の調査精度向上:綿密な地質調査や地下埋設物調査で発生量の見積精度を高め、手戻りを減少。
- 再利用先の早期検討:発生副産物の再利用先を計画時点から具体的に押さえ、コストと環境負荷を低減。
- 効率的な運搬計画:運搬方法や経路を最適化し、安全かつ低コストな搬出を実現。
まとめ
残土・産廃処理の最適化は、法令遵守を前提とした計画策定、適正な施工・運搬管理、そして監督職員や関係者との連携が鍵です。
これらを徹底することで、効率的かつ環境配慮した工事運営が可能になります。
公共工事の共通仕様書や各府県のマニュアルを参考に、若手現場監督として確実に実践しましょう。
(この記事は国土交通省の共通仕様書や大阪府仕様書をもとに作成しています。)
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