はじめに
工事を始める前に行う「現場調査」は、単に場所を確認するだけでなく、その後の工事全体の成否を左右する非常に重要なプロセスです。
入念な事前調査を行うことで、計画段階では気づけなかったリスクを回避し、円滑かつ安全に工事を進めることができます。
本記事では、土木工事における現場着手前の調査で特に注意すべきポイントを解説します。
設計図書との徹底照合
- 最新図書の入手:「仕様書」「契約図面」「現場説明書」「質問回答書」「工事数量総括表」など、関連図書を最新版で揃えます。
- 不一致・誤り・抜け漏れの確認:設計図書と現場の実状が一致しているか、誤りや抜け漏れがないか細部まで照合。
- 予期せぬ施工条件の発見:設計段階で想定できなかった地形や支障物件などがないか、現地で確認します。
- 協議と手続き:不一致やトラブルが見つかったら、発注者や監督職員と速やかに協議し、図書訂正や工期・契約金額の見直しを行います。
地盤・地下条件の把握
- 地質調査報告書の確認:既存のボーリング調査報告を整理し、必要であれば追加調査を検討。
- 軟弱地盤の評価:圧密沈下、液状化、支持力不足、法面安定性などを資料から評価。
- 地下水・湧水の調査:湧水量、地下水位、透水係数などを確認し、排水対策を計画。
施工上の制約条件の確認
- 物理的制約:作業スペース/資材置き場/仮設設備設置場所の確保と交通規制の必要性。
- 工事時期:気候条件(雨・雪・気温)や地域行事など、工事時期特有の影響を把握。
- 人員計画:必要人数や特定技能者の確保状況を確認し、要員不足時の対策を検討。
- 使用機械:機械能力、安全・環境条件を考慮した最適機種の選定。
- 工程計画:準備・後片付け期間、休日・天候不良日を考慮した無理のない最適な工程作成。
既存構造物・埋設物の確認
- 地下埋設物・埋蔵文化財:ガス管・水道管・電線管などの位置・深度を調査し、可能な限り試験掘りで直接確認。
- 支障物件の洗い出し:現場内外の既存構造物や工作物が工事に支障とならないかチェック。
- 関係機関との調整:地下占用企業者や文化財保護機関との協議状況を把握し、移設等の期間を確認。
関係機関・地元との調整事項の確認
- 協議内容の把握:道路・河川管理者、鉄道会社、警察、自治体などとの協議結果を整理。
- 調整進捗の管理:未了事項が工事制約とならないよう、進捗状況を確認。
- 条例・規制の確認:公害防止条例など地域特有の規制を工事計画に反映。
環境対策に関する調査と計画
- 環境要因の把握:現場周辺の騒音・振動・粉じん・水質などを事前に調査。
- 対策施設の設計:防音囲い、濁水処理施設などの配置場所や規模を計画。
- 法令・条例の遵守:適用される環境基準や条例の規制値を再確認し、計画に反映。
建設リサイクル法に基づく事前調査(解体工事等)
- 事前調査:分別解体対象資材の構造・付着物(アスベスト等)を詳細に調査。
- 計画書の作成:分別解体方法・見込量を記載し、発注者へ説明後、7日前に県知事等へ届出。
- 計画変更手続き:必要に応じて発注者との契約変更や工程・費用の見直しを実施。
まとめ
工事着手前の調査は、工事を円滑に進めるための羅針盤です。
設計図書の照合から地盤・施工条件、既存埋設物、関係機関調整、環境対策、法規制調査まで、多岐にわたるポイントをくまなくチェックしましょう。
過去に、発注者と設計会社との契約で開発許可等の申請業務を行い、その後に弊社が別工事として開発工事施工の契約を交わすといった体制でプロジェクトが進められていました。
その中で、設計会社から提出された書類に不備があり、開発許可がおりていなかったために工事着手が大幅に遅れ、工程的に非常に苦労した経験があります。
この教訓から、工程表作成および提出時には「許可取得済み」等の条件を加え、責任の所在を明確にすることを徹底しています。
入念な事前調査と適切な条件設定が、安全で高品質な工事の実現につながります。
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