壊すには惜しい——万博・大屋根リングを「せめて1年」残すという選択

現場監督虎の巻


壮大な構造物をつくり上げ、会期が終われば解体する——それが博覧会の常道だとしても、今回ばかりは壊すには惜しいと感じています。

現場に立つ者として、図面の裏にある試行錯誤、雨風と戦った段取り、一本一本のボルトの締め付けまで知っているからこそ、胸の奥が少しだけ痛むのです。

報道では一部保存の方針が伝えられていますが、可能なら「会場をまるごと、せめて1年間」静かに残す選択肢を検討できないか——そんな気持ちがあります。

まだ見られていない人がいますし、完成した姿を大勢がゆっくり味わう時間があっても良いはずです。


1年限定でも残す意味

  • 鑑賞の機会会期中に訪れなかった人へ、最後の「見納め」の場をつくる。

  • 学びの場設計・施工・維持管理を学生や若手技術者が実地で学べる

  • 記録の充実解体前にディテールを余さず記録し、次世代へ技術遺産として残せる。

  • 地域への還元静かな回遊路として開放し、観光と日常の交点をつくる。

  • 解体計画の磨き込み資源循環・再利用の実証を重ね、より良い解体へつなげる


安全に残すための運用イメージ

  • 通行範囲を限定し、点検頻度・気象条件に応じてクローズ基準を明確化

  • 予約制・一方向動線・夜間クローズで人流と荷重を管理

  • 構造・雨仕舞・接合部の定点モニタリングを公開し、透明性を担保


現場が今できること

  • アーカイブ化材料ロット、接合ディテール、治具、施工手順を写真・動画で体系化

  • ストーリー展示「どうやってここまで来たか」を簡易パネルで可視化

  • 循環設計の宣言解体後の再資源化・再利用の行き先を前もって示す。


まとめ


つくることは誇りであり、解体は次へ進むための準備です。

だからこそ、その間に伝える猶予が少し必要だと感じます。

現場で積み重ねた汗と工夫の軌跡を、せめてもう一年、街に開いてからバトンを渡す——その移行期間があれば、関わったすべての人が前を向いて次章へ進めるはずです。

〈現場監督虎の巻〉は、そんな思いと記録をこれからも残していきたいです。


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